先輩の声
先輩の声(技術)
現在開発部に所属しています。
月日は早いもので、まもなく中堅社員と呼ばれる歳(社歴)になります。最近の仕事内容というよりは、入社してからこれまでの業務内容、その中で感じたことなどをご紹介したいと思います。
入社して、研修期間を終えて、開発部に配属されたとき、希望していた製品ではありませんでしたが、新製品の開発メンバーに加えて頂きました。新卒の素人がいきなり開発メンバーに加わることはあまりないらしく、新しいモノを創りたいと思っていたこともあって、正直「ラッキーだな。」って感じていました。配属先を決める面接のとき、当時の開発部長が言った最初の質問、「お前、タフか?」の意味に気付くのはまだまだ先の話です。
幸いにも新製品開発に携わることになり、モチベーションは一気に高まりました。与えられた業務を遂行する以外の時間は全て自身のスキルアップに費やしました。図面の書き方を覚えて、製品の機構を覚えて、他社の製品を研究して、設計・試作を繰り返して…。充実した業務の中で壁にぶつかりました。設計の難しさです。
これは技術者として永遠の課題であり、何度超えても立ちはだかるものだと思います。図面の書き方、部品の作り方、その背景にある技術、さりげないところに重要なことが隠れています。つまり、自分自身が圧倒的な知識不足・経験不足だということを突きつけられたんです。経験はこれから身につけるしかありませんが、とりあえず知識だけでも補う為に専門書などを頼りに勉強しました。決して楽ではありませんでしたし、帰りが遅くなる日も続きました。
それでもそれを継続できたのは、徐々に製品設計の勘所がわかり始めて、試作を繰り返す毎に思い通りの成果が表れてきたからです。
いまだにロクな設計・製図をできていませんが、「設計→解析→製図→試作→実験」の部分が開発業務の中で最も面白いところであり、他の業務に携わっている方々には味わえない醍醐味だと思います。実験室でデータを見ながら独りでニヤニヤするという一見危ない光景が、この仕事を一番楽しめている瞬間かもしれませんね。
製品設計も大詰めとなって、量産に向けて各部品をベンダーさんに手配するところまで辿り着きました。でもその時にとてつもない技術者としての壁が立ち塞がりました。それは製品に魅力がないという根本的な問題です。
それまで、自分の設計は社内の営業の方々や既存製品を使用している方々の意見を可能な限り取り入れるようにして進めていました。そこで一番の重点課題が「完全置換」でした。「置換」というのは既存製品が取り付けられているところに新規の製品がそのまま取り付けられることで、字の通り「置き換え」ができることです。「完全置換」を優先するために色々な新しい要素を犠牲にしました。あくまで「完全置換」が前提で、その中で取り入れることが可能な新規要素だけを詰め込む。当時、自分も含めて多くの方々が「完全置換」こそが顧客要求の最優先事項だと思っていたと思います。
確かに「完全置換」が重要であることには間違いないのですが、そこに縛られるあまり、製品自身の魅力が陳腐なものとなってしまったように思えます。魅力を欠いた製品は量産一歩手前で廃案となって、設計は振り出しに戻ることになったんです。
今思えば当時の経営判断は正しかったと思いますし、だからこそ今があると思います。散々意見に振り回された挙句、折角の製品をありきたりな設計にしてしまった責任はとても感じましたし、自分が思う通りの設計をできなかったことに対しても不完全燃焼な感覚がありました。設計が振り出しに戻り、それまでに描いた1000枚近い図面を全てシュレッダーにかけたときの悔しさは忘れられない大きな財産になりました。
入社以来の製品開発が振り出しに戻り、新しい新製品のテーマを考えていた頃、先輩が飲みに誘ってくれました。居酒屋談議のお題は「何を作るか」でした。居酒屋という場所もあって、当然具体的な内容については語れませんが、もっと本質的な「自分たちは何に対して給料をもらっているのか」という仕事の目的に関わる話でした。給料はコガネイの製品を買ってくれたお客様が製品に対して支払った代金から出ています。
それじゃあ、お客様は何に対して代金を支払ったのか。「えっ?製品でしょ?」って思った方はもうしばらくつきあってください(笑)。製品はお客様に対して何を与えているのかということなんです。談議の結論は、「自分たちは製品がお客様にもたらす価値に対して代金を頂いている」というところに行き着きました。要は、新製品というのは「お客様に対して新しい価値観を提供するものでなければならない」ということなんです。
ある意味、呪縛にも似た「完全互換」を捨てた製品開発は面白い方向に進みました。お客様が、そしてコガネイを含めた同じ業界のメーカーが長年抱えてきた問題に焦点を当てた、新しい切り口のコンセプトを目標にして試行錯誤を繰り返しました。数々の新しい試みが製品に盛り込まれて、それに伴って特許の出願件数も増えました。開発という業務の中で最も苦しい地獄の日々を乗り切れたのは、仕事の目的が明確になって、「何の為に」「誰の為に」という整理ができるようになったからからかもしれません。
長々と、まるで自分独りでやったかのように書いてしまいましたが、仕事は自分独りで成り立つものではありません。配属されてからこれまで、上司はずっと矢面で盾になりながら製品開発のリーダーとして自分たちの業務を支えてくれました。新しい切り口のコンセプトを発案したのは、居酒屋談議のときの先輩でした。それだけでなく、多くの先輩・同期・後輩に恵まれて今の仕事が成り立っていると考えていますし、それは決して忘れてはいけないことだと思います。
紆余曲折を経て、待望の新製品が発売になります。入社してから、こんな長丁場になるとは夢にも思っていなかったですが…(笑)。新しいコンセプトがお客様に受け入れられるかどうかはまだ判りません。でも、明確な目的を持って前例を変えていくということは大事だと思います。そして良いところは残して、駄目なところは修正しながら継続していくことは、さらに重要なことだと思っています。
これからのコガネイを考えるということは、経営層だけの話ではないと思います。自分も含めた社員が、それぞれの頭で考えて、行動に移していかなければいけないと思います。それは、これから縁あってコガネイに入社してくる方々も例外ではありません。今、コガネイがおかれている立場は大変厳しいものです。生き残りをかけて市場激化が進み、変化が問われる一方で、古い体質からなかなか抜け出せずにいます。それは組織や体制というよりも、コガネイ社員の意識の中に刷り込まれているようにも思えます。
これは前出の先輩とは別の先輩と居酒屋談議をしたときのお題であり、自分の前に立ち塞がる大きな壁のひとつです。「もしかしたら自分も既に…」と自身を振り返ることがよくあります。現に、「コガネイを変えてやる」と勇んで入社した新人がまだ具体的な結果を出せていません。それでもまだ諦めずに足掻いているわけです(笑)。
コガネイは大きく変化しようとしている会社です。変化しようとするからこそ成長があって、そこが魅力なんだと思います。変化することに終わりはありません。常に高みを目指して変化・成長していきたいですね。その原動力は自分たち社員であり、これからコガネイに入社してくる方々だと思うんです。
これから新入社員としてコガネイに入ってくる方々に関しては、成長願望が強い人がいいですね。価値観はそれぞれですが、コガネイがもっと良い会社になる前提条件として個人の成長は必須だと思います。後輩を自分より成長させることが先輩として目標だと思うし、かと言って後輩に追い抜かれるのはイヤなんで自分も努力する。そうやってお互いに成長していければいいと思います。
あと、思ったことをいってもらったほうがもちろん先輩としてはやりやすいですね。超能力者ではないんで、自分は(笑)。言ってくれさえすればいろいろ協力はできると思いますし。
最後に、コガネイに限ったことではないと思いますが、自分の考えを自分の言葉で伝えようとするというのが就職活動をしていく中で一番大事な事ではないかと思いますね。それで落とされるなら諦めがつくけど、就職雑誌のマニュアルからなどで得た知識で発言して採用してもらっても、きっとその先苦労するんじゃないかと思うんです。
就職はあくまで通過点であり、スタートラインだと思いますので、等身大の自分をぶつけるような就職活動をやっていってもらえればいいと思います。